2018年06月20日

江之浦測候所を体感する旅(その6)



冬至へのこだわりが続く、光学ガラス舞台と円形の観客席だ。隧道と平行に冬至の軸線に沿って、
檜の木組み、清水寺の舞台のミニチュア版の上に光学ガラスの床がある。その上に乗ることは禁じられている。
観客席からは海面に浮かんでいるように見えているガラスの床は、冬至の日が昇るその時にどのように陽日
を加工して見せてくれるのだろうか?

最後の見せ場は千利休「待庵(たいあん)」の本歌取りである二畳敷きの茶室「雨聴天(うちょうてん)」と、
山形県にある重要文化財指定の石鳥居に準じて作られた石造鳥居だ。春分・秋分には茶室から鳥居を通して朝日が見える趣向。
でもこの茶室、わびさびの極を行っていて、屋根がさびたトタンだ。何でも、ミカン畑だった敷地に残された小屋の錆びた
トタンを屋根としている。しかも「トタン屋根を打つ雨音を聴く」という意味を込めて、茶室は「雨聴天」と名付けられている。
うーん真似できる代物ではない。

ひとしきり、測候所を味わった後は、持ってきたワイン、つまみ、おにぎりの出番だ。先の光学ガラス舞台の観客席、
これも古代ローマ円形劇場跡を実測再現した代物、ここに座り五月の心地よい陽光と軽くそよぐ薫風を浴びての
ワイン付きランチはたまらない。

話も弾み心地よい酔いの中に身を任せているとスタッフが寄ってきた。
「見学は12時までです。間もなくバスが出ます」と、一気に現実に戻され次の旅程に着くことになった。
次回は秋の江之浦測候所を楽しみたいものだ。
(おしまい)


  


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2018年06月18日

江之浦測候所を体感する旅(その5)



ギャラリーを出ると石舞台だ。飛鳥にある石舞台とはちょいと違う。能舞台の寸法を基本にこの現場から出土した転石が舞台だ
見学コースの割肌の踏み石、石を縁取る杉苔、子砂利の庭の表面の文様が水の流れを見立てている。
枯山水の庭園と言うことになるが、凄いのは苔だ。木陰ならいざ知らず、陽に照らされた場所での苔を育て保つのはきつい。
いたるところに見たこともないピンが立っているので、スタッフに訊ねたところ、苔のためのミニスプリンクラーを設けているとのこと。

苔は水を上げればいいという訳でない、ある状態の水に慣れてしまい、いつも欲しがるようになる。
我が家の庭の日当たりのいい場所の杉苔はダメになったことを見てきたから、少々心配だ。年月を重ねどうなっていくか見守りたい。
 次は「冬至光遥拝隧道」山の斜面に突き出た隧道に冬至の朝、相模湾から昇る陽光が入り込み70mの隧道を光速で突き抜け、
その先にある巨石を照らすことになる。中に入るとスチールに囲まれた四角の筒の先に相模湾の光が見える様はなかなかの感動だ。
差し込む瞬間を見たいものだ。(つづく)

  


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2018年06月16日

江之浦測候所を体感する旅(その4)



 こだわりの極みを感じる建物の水廻りが気になる。トイレには設計者の力が入る。ステンレスと石、エッジの効いたデザインが光る。
小便器は飛散が極小つまり汚れない機器が使われている。大阪の地下鉄のトイレと同じだ。小山町で手掛ける小便器にもできる限り
この機器を使うことがしている。どこが違うって、跨いで使用するようになるため、筒から出てから壁に到着する距離が短いからだ。
トイレ談義はこのぐらいにして、見学コースに戻ろう。

「夏至光遥拝100メートルギャラリー」が本施設の唯一の屋内展示場だ。海抜100m地点に長さ100mのギャラリー、
夏至の朝、海から昇る太陽光はこの空間を数分間に渡って駆け抜けるという。「測候所」という名を付けた一つ目のこだわりを見た。
大谷石の壁に片持ちの屋根を設け可能な限り大きなガラスが自立して立っている。透明感のある空間から気持ちのいい展望が開ける。
壁側には7点の杉本博司氏の写真がぽつりぽつりと並ぶ。いずれも海の景だ。(つづく)


  


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2018年06月14日

江之浦測候所を体感する旅(その3)



相当にお金をかけた施設だ。杉本氏が唸らせることを言っている
「想定していなかったアートで得たお金は、アートに還元したいと思ったんですね。
死ぬときにはすべてキャッシュバランスゼロで終わりたい。すべてがアートに始まり、
アートに終わったという形になれば。江戸っ子ですから宵越しの金は持たない、
人生越しの金は持たないというように。そういった基本構想でもって、

みなさんに残しておけるような建物、文化施設をつくっていきたいと思ったんです。ですから、
これは普通の建物ではなくて、誰が見てもアートとしか思えないのです。」
 では、測候所の名付けた訳は?に対して、
 「悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。
そしてそれがアートの起源でもあった。
新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、
通過点である春分と秋分。天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、
そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。」と答えている。

 まずは、きりっとした一文字の軒線、4面ガラス張り、大矢石の壁が中に見える「待合棟」に通された。
中央に置かれた大テーブルは樹齢を重ねた屋久杉だ。ここで見学での注意事項の説明があった。

印象的だったことに、立入禁止を示すにこぶし大の石にひもを結んだ止め石を置いてあることや、

他にも文字での案内は無いとのこと。アートスケープを邪魔するものは排除している。

(つづく)


  


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2018年06月12日

江之浦測候所を体感する旅(その2)



スタッフが早速迎えに出ていてくれた。予約者であることの確認とウエルカムの挨拶のためだ。
入り口らしき方に向かうと、気象観測のためのレーダー何ていうものはなく、相当に歴史を重ねたどっしりとした門が現れた。

室町時代に明月院(臨済宗)の正門として建てられ、関東大震災時に半壊、六本木、その後、根津美術館正門、美術館建替えに伴い、
この地に移築されている。

名月門を横目に、今度は極めて現代建築の待合棟に通される。4面ガラス張り、軒線の美しいスマートな建築だ。
 ここで、“ソッコウジョ”の正体が明らかになった。

写真、演劇、建築など多領域で活躍する現代美術家・杉本博司氏が創立した小田原文化財団の美術施設なのだ。
杉本氏が10年以上の歳月をかけて構想を練り上げてきた施設だ。氏と榊田倫之による新素材研究所が設計・デザイン監修を行い
、2014年3月に着工し、昨年17年10月9日オープンした。

敷地面積は9496㎡、建築面積は789㎡。アートを鑑賞するためのギャラリー棟、光学ガラスでできた舞台、巨石を使用した石舞台、
千利休の「待庵」を写した茶室、長年収集した貴重な銘石を配した広大な庭園、各地から寄贈された歴史ある門、待合棟などで構成される。
これらの建築物は、現在では継承が困難になりつつある伝統工法を再現している。人から尋ねられたら「アートスケープ空間」って説明しようか。聞いた人から「余計わからん」と言われるかな。

杉本氏の作品を後で見ることになるが、昨年末に由布院で見た「COMICO ART MUSEUM」に氏の展示があったことを思い出した。(つづく)

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2018年06月11日

江之浦測候所を体感する旅(その1)

*

小山町は静岡県にあるけど、小田原市、観光では箱根町を中心とした神奈川西部地域と関係が深い。
これは町内を流れる鮎沢川が、神奈川県に入り酒匂川に名を変え相模湾に流れ込むということで流域が同じ、
かつては小田原藩の領地だったことからくる。町のイベントには西湘地域の10市町の首長や議長らを招いている。
その時には小生にも接待役が回ってくるので、町での取組を酔った調子で話を数割増しの勢いで話す。
そのことを面白く思った議員から声がかかる。開成町に出向き、今回は小田原だ。
小田原高校OBの議員の集まりがあり、その総会で話してくれと言うのだ。
断る理由は無いし、小田原NO1の老舗料理屋「だるま」が会場となればなおのことである。
きっと、夜遅くなる、無理に小山に帰ろうとすると終電に間に合わない、乗り過ごしの危険もある。
ならば、泊まろう、幸い翌日は土曜日、小田原を堪能して帰ろう。と言うことにして、
小田原市役所OBの三廻部さんに相談したところ「江之浦測候所」に案内してくれると言う。
「そっこうじょ?」何それ?見るには予約が必要、しかも入場料が3000円と言うではないか!
文化財の測候所を改修して何かになっているんだろうかな?と勝手に想像し、5月12日土曜の朝、
小田原駅に二日酔いの浮遊感を持って向かった。東京から来た小塚さんと合流した後にJR下りに乗り、根府川で降りた。
そこに三廻部さんが待っていてくれた。ワイン、つまみ、おにぎりを持って 美術館らしきところに行くのに、飲食物を持ち込むという。
ますます、「江之浦測候所」の正体が分からなくなる。根府川駅から送迎バスが出ているが、満席で予約できずタクシーで向かうことになっていた。
10分足らずで相模湾を一望できる丘にある「その測候所」に着いた。(つづく)

  


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