2011年10月21日

メタボリズムの未来都市展(その3)




 広島で丹下健三が設計した広島ピースセンターを30年ぶりに目にした。確かに原爆
ドームへ視線を導き、歴史の記憶を継承するという趣旨が伝わってくる。
原爆により市街地は一瞬にして破壊され、1945年末までに13万人もの人命が奪われ、
生存者もケロイド、放射線後遺症 への不安に生涯苦しみ、市民が経験した苦痛は
人類史上類を見ないものであった。

  丹下も参画した戦後の都市計画により100m幅の平和大通りには高層ビル建設され、
河川が多く、そこが水と緑の帯になっていることもあり環境都市であることを感じる。
都市高速道路、ポートランド見た車両とほぼ同じLRTが走り、路線バスも多い。
中国・四国地方を代表する素晴らしい都市になっている。

 話をもとに戻す。森美術館の「メタボリズムの未来都市展」は4つのセクションに
分かれていて、丹下健三の戦災復興計画「広島ピースセンター」から始まる
メタボリズムの誕生を第1セクションとし、「メタボリズムの時代」、「空間から環境へ」
「グローバル・メタボリズム」と続く。

 セクション2では何といっても黒川紀章の銀座にある「中銀カプセルハウス」が
まさに新陳代謝建築物として印象的だ。また、1956年の浅田孝+竹中工務店の南極
観測隊昭和基地は工場で作ったパーツを現地で組み立てるプレファブ建築の誕生も
気なる。

セクション3は「人類の進歩と調和」の1970年大阪万博が舞台となる。仮設建築だ
けに思い切った提案が形になって現れた。
万博以降、丹下を始めとするメタボリズムの建築家たちは海外に活躍の場を広げて
いくことになる。東京湾を横断する海上都市や立体都市など当時は図面や模型でし
か表現できなかったものがCG映像で再現されている。
とにかく一見の価値がある展覧会である。(おしまい)

  


Posted by Qさん 大魔人 at 23:12Comments(0)