2012年06月25日

掛川建築文化研究会の建築探訪の旅(その2)




これが2009年に建 築学会賞をとった石上純也氏の設計によるKAIT(Kanagawa
Institute of Technology)工房。平たく言えば工作室だ。金 属加工、鍛造、陶芸、
レーザー加工、木工加工、PC連動機械などが設置され ている。

小生が今から遡ること35年 ほど前、沼津高専機械工学に席を置いていた当時の
機械工作実習室は、金属の切削加工時に出る熱で高温になった刃物を冷却するために浴
びせる油が蒸発する匂い、鍛造でコークスが赤々と燃える匂い、鋳造でどろどろに溶けた
アルミの湯が発する匂い、木工旋盤が発する木の焦げる匂い、アーク溶接が放つ危険な光、
エアーハンマーが真っ赤になった鉄をたたく衝撃音など、ものづくりの時に発せられる
現象に満ち溢れていて、まさに工場だった。


目の前にあるKAIT工房は工場とは一線どころか二線を画す建築だ。
 『森の中でのものづくり』のコンセプトのもとに壁のない2500㎡の空間に、ランダ
ムに白く塗られた鉄のフラットバー状の柱が林立する。矩形を形づくるように規則
正しく立っているのが柱の姿だが、ここは違う。疎であったり密であったり、フラ
ットバーの向く方向もまちまちで、おのおのが垂直荷重、水平荷重を分担している。
それにしてもスレンダーなその柱の群は空間に浮遊感をもたらしている。
中には工作機械もテーブルもちょっと講義スペースも用意されなければならないの
で、柱の位置は相当量の検討があったであろう。それでも携帯の画面を見ながら 歩
いていようものなら、容赦なく目の前にその白い鉄の板が現れ、痛い目に遭うことにな
るだろう。(つづく)


  


Posted by Qさん 大魔人 at 23:05Comments(0)