2010年03月06日

西日本新聞連載(虫庭の宿第102回)


先月、片手に杖をついた60そこそこの方が小生を尋ねて職場に来られた。
見るからに何か文句を言いたげに、周りの若い連中はさっと身を引き
「み、溝口さん、お客さんです。」
心当たりはない、できれば避けたい感じの人だ。

開口一番「わしは、溝口さんあんたの応援団だよ」
差し出された名刺には「吉永の環境を考える会」と書かれていた。
「???」と首をかしげた。

「もう忘れっちゃっているようだけど、藤枝の県庁舎であんたが”おもてなしの話”を

された時に、”おもてなしって観光関係者がもてなしの技術を磨くことじゃなくて、
我が家に来客があるときのように綺麗に掃除し花を飾り、玄関に水を打ち、何なら香を

焚き、お茶を立てるようなことを、我が家を一歩出た地域でできるかだ。”と言われた。

そのことを実践しようと蓬莱橋(島田市にある大井川にかかる世界一長い木橋)
のそばの草ぼうぼう、ごみもある小川を綺麗にしたんだ、自分達のできる範囲でね。
できない部分は市に働きかけたら、やってくれて地域がかなり綺麗になった。
そしたら、観光に来られた方に喜ばれただけじゃなくて、地域の交通事故が減ったんだ。」

次はここをやりたいと地図を出して説明してくれた。

何やら鼻にツーンと来るものを感じた。
もてなすことって、何より綺麗にすること それが人を気持ちよくお迎えすること
基本の基を改めて気づかされた。それ以後、少なくとも机の上は綺麗にすることを
相当に心がけている。今頃かい?と笑われそうだけどね。

さて、虫庭の宿はどうなったとのメールが入りましたので、久々に送ります。
今回のお話はNHKの「プロジェクトX 挑戦者たち」で放映された
「湯布院 癒しの里の百年戦争」のお話です。
ゴルフ場開発、高層ホテルの進出、暴力団の出所祝いなど、いつも何か危機があると
皆の叡智と勇気と実行力で、解決にあったきたが、今回のバブル景気のカネの嵐は相当に手ごわかった。
これにより生まれたのが「潤いのある町づくり条例」。建蔽率ではなく緑地率など独自の規制をかけて
いくことになった。この条例を定めるご苦労がプロジェクトXの映像にある。

条例ができたから大規模開発が抑え込まれ、醜い建屋が出現しなくなり、美しい由布院ができていく
とはすぐにはならない。小生の由布院赴任期間にもこの条例を元に大規模開発の抑制と

可能な限り良好な景観づくりには、微力ながら尽力したつもりだ。
ただ、景観づくりには100年かかる。
景観は形ではあるけど、それ以前のもてなしの心こそが良好な景観をつくりだすのだ。

(つづく)




  


Posted by Qさん 大魔人 at 22:48Comments(0)