2010年07月26日
三日坊さんの旅(その5)
「暁天坐」。ここで心を整える。
次は朝のおつとめ「朝課」。どの宗教でも朝夕におつとめがあるが、神・仏に、
鳴り物を入れ念仏を唱えて祈るということである。
袈裟に身を包んだ住職、修行僧が行うおつとめに同席した。
いよいよ、朝食になる。「小食(しょうじき)」と呼び、おかゆとひじき、漬物
にごま塩がついていた。
このおかゆには十の利点ありと教わる。色艶、気力、長寿、安楽、言葉清く爽や
か、宿便残らず、風邪を引かない、
消化よく栄養となる、喉の渇かず、便通もよし とのこと。何より腹八分は良
し。昨日の夕食「薬石」同様の作法に基づき食が進む。
食後、作務があり風呂掃除が当てられた。作務終了まで、健康そのものを心底
感じる朝の一連の行動であった。
そしていよいよ、三日坊さんの旅のメインイベントとも言える「滝行」の場、油
山寺に向う。千古の昔、
考謙天皇が眼病の時に油山寺の薬師如来に祈願をかけられ、滝の水を加持祈祷
し、その霊水で洗眼され、
眼病全快された所以の滝である。その名も「るりの滝」、名に相応しい優しい一
筋の瀧である。
到着後、住職の案内による境内拝観をし、写経に入る。紙に息がかからぬように
和紙のマスクをかけ、
薄く書かれたお経を慎重になぞり書きしていく。結構集中できるものである。
「滝行」の時間が刻一刻と迫ってきた。2月の寒中時だけに体調に自信のない方
は無理してこの荒行をしないよう
にと言われた。二日前ほど前の喉の痛みは不思議と収まっており、ここまで来て
やらぬわけにはいかない。
結局14人の参加者のうち、滝行をしなかったのは一人だけで、私より年上にも
かかわらず女性は皆、滝に打たれる事になった。
「るり滝」の傍らには滝行のために更衣スペースが設けられ、そこで白装束に
なった。滝の流れ落ちる池にまずは
つま先からそろりそろりと足を入れる。冷たい!足首上10センチ程の池に入って
いると冷たさは痛さに変わってくる。
まずは般若心経を皆で唱えた後、一人ずつ滝に打たれる。
松平健に似た住職が仁王立ちして不動明王真言「ノーマァサマンダ バザラダ
ンカン」と唱える。
滝に打たれる者も同じように唱える。目をかっと開き気合を入れて滝に臨んだ。
住職がいいというまで打たれる。
その人の反応を見ての判断だ。小生は威勢よくというよりやせ我慢していたせい
か人より長めの時間滝に打たれることになった。
あごを引き後頭部下に滝を受ける。受けた滝の水が首筋から流れ落ちていく。
白装束はぴったりと体にくっつき、霊水が全身を包み込む。冷たさ、痛さの次は
意識が朦朧となり仏に近づいていくと
思っていたが、そこまでやると素人の我々には危険なので一分間までぐらいで終
わっていく。
でも実に長い一分であった。朝は氷が張ったであろう池の中で滝に打たれる順番
を待つ人たちを横目に濡れた
白装束から作務衣にすぐに着替えた。体はホカホカ、内部から熱を発しているこ
とがわかる。
滝業のあとには、地元にある「わしょく亭高尾」のこだわりの薬膳弁当が待って
いた。鯉、鯛味噌、鮪と昆布、
蕗のとう、菜の花、筍、、メニューには食材が書かれ、それぞれの効能が書かれ
ていた。そこに書かれていた
「菜の花 ガン予防」が気になった。そうか、菜の花かぁ
油山寺を後に、この旅の最後「法多山」に向う。遠州三山の一つで最も規模が大
きく、参拝者も相当に多い。
725年聖武天皇勅命により、行基上人によって創建。高野山真言宗に属し厄除け
観音として知られる。名物の「厄除け団子」はお勧め。
とにかく広い境内を拝観、その後普段は入ることができない本坊にて「お茶の歴
史と心」の講和があった。
仏教とともに伝来したお茶の歴史、そしてお茶の持つ八つの福― 眼福、鼻福、耳
福、唇福、口福、到福、幸福、
至福のお話を伺った。そしてお茶の入れ方。
袋井のお茶は深蒸茶なので、70〜80度のお湯に 40秒ぐらいで出すとのこと。こ
れをあえて50〜60度、
90秒ぐらいで出すのも一興だ。
遠方に出かけるときに静岡のお茶をただ差上げるのではなく、煎茶を出すコン
パクトな茶器を持参し、
たっぷりめの茶葉に一煎目は50度50ccのお湯で2分ぐらいかけて出す。そして一
滴残らず器に取り、
それを人数分の湯呑に分ける。二煎目は80度でいつもの湯量で出す。一煎目の甘
みのある深い味、
二煎目はしぶい味の異なる味が楽しめて、普段飲んでいるお茶の味との違いに驚
かれる。
お茶の後は「心の書」一文字として、半紙に今回の旅を一文字で墨書きし、それ
を掲げて一人ずつ
皆の前で、今回の旅のことを語るというのだ。なかなかうまいことをする。
小生は「喜」とした。実に結構な旅をさていただいた。「お坊さんの日常生活を
体験し、新しい自分を
発見する」というコピーに相応しい内容だった。新しい自分を発見したつもり
が、すぐに鮮度が落ちるので、
また「三日坊さん」を旅しなければと思う。次回は2泊3日コースに参加したいも
のだ。是非、貴方もご一緒にどうぞ。
毎日実施している旅行商品ではなく、すぐは9月11,12日及び11月20〜22日にあ
る。(詳しくは袋井市観光協会のHPから)
おしまい
Posted by Qさん 大魔人 at 21:05│Comments(0)