2008年06月24日

由布院の旅(その2)



その後、藤林さんの案内で山荘無量塔に向かった。無量塔と書いて、むらた。

「無量」とは仏教のことばで、数字で計ることのできない無限のもの、「塔」とは建物を意味する。由布院盆地を囲む山の懐にある広い敷地、だが、高低差がかなりあり、本来旅館を建てるには難しい土地形状かもしれない。でも、隣に変なものが建ち、環境を壊されることもないし、 各離れの独立性を高くすることができ、かつ必然的に立体的な緑の配置になり、いっそう山荘の雰囲気を醸し出している。

かつての杉・桧の山を伐採抜根し、くぬぎ、こなら、シャラ、カエデなど里山にある木々に植え替えている。 いかにも昔からそこにはえていたかのように。これは旅館「玉の湯」が水田だった土地を5m程掘って 山土に入れ替え雑木を植え、いかにも昔からある林の中にたたずむように旅館を造ったことに共通している。宿は別府にあった別荘、豪雪地帯の庄屋といった古民家を移築してきている。

「Qさん、日田から由布院に来て喫茶、食事処をやらせてもらい、次に旅館をやることになったんだけど、別に旅館をやりたかったわけではない。気持ちいい環境を手に入れるためにはそこそこ広い土地が必要だし、 その土地への投資を回収するには旅館がいいと判断したからなんだ。

周りは皆、旅館業は初めてなんだからペンションぐらいから始めたらどう?と言われたけど、 亀の井別荘、玉の湯があるから由布院に来たので、やるからには両旅館と肩を並べ、 かつそこに無いものをやりたかった。 それが「憧れの生活スタイルの提案」なんだ。だから客室は40坪程の広さ、周囲の環境を確保し生活する空間を用意した。」 お連れした静岡県の温泉ホテルの経営者が「うちの宿が建っているところは、こちらのように観光地ではないのですよ、 だから観光のお客様は少ないのです。」と言った。 藤林さんは「そこの地の生活文化こそが、観光資源ではないのでしょうか。」なるほど由布院は「もっとも暮らしやすい観光地こそ、優れた観光地」をスローガンに生活型観光地を標榜している。

かっこいいムラの暮らしを形にしているのが由布院の可能のスタイルなのだ。

次に「それでは、長男を由布院に出すというのはどうでしょうか?」 「勤める先の旅館のスタイルに染まり、そこを超える発想、行動ができなくなるからやめたほうがいい、 もし来たいというなら、私に付いて3日間ほど過ごせばそれだけでいいと思う。大事なのは真似・学ぶことよりも考える力をつけることだ。」(つづく)



Posted by Qさん 大魔人 at 21:36

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由布院の旅(その2)