2008年06月24日

由布院の旅(その1)


静岡県にある温泉ホテルの建替えの相談を受け、会長、社長、常務、
そして私のパートナーの設計事務所のKさんと連れ立って由布院に行くことにした。

 我々が最初に目指した店、それが「由布院 市の坐」だ。
由布院観光総合事務所事務局長を務めている時に、大学卒業して入所してきた者がいた。

井尾君だ。彼の家は由布院で100年続く「井尾百貨店」と言う名の酒屋さんだ。
かつては呉服屋だったが、由布院の変化に合わせて、お酒をはじめ旅館用食材の仕入れ販売業
に業態を変えてきている。
しかし、お酒の小売がパッとしなくなってきた。安売り量販店、コンビニの出店で競争相手が増えて
きたことが主たる原因だ。

井尾君はというと、観光総合事務所勤務を続けることよりも町内で起業することを選択した。
ニセコ町に出向、全国初の観光協会の株式会社化に尽力し戻ってきた後、間もなく「桐屋」
という日本茶の喫茶を由布院美術館の一角で始めた。
7,8人のカウンター席で、目の前でバーテンダーよろしく九州各地の銘茶、玉露、ほうじ茶、冷茶
を入れて出してくれていた。他にも特に評判の高かったおはぎ、プリンなども作り、テイクアウトにも応じていた。

 ここで商売のノウハウを身につけた彼の次なるチャレンジが「結豆腐 市の坐」だ。

井尾百貨店の道路を挟んで前の敷地に、富山県からの大屋根の古民家を移築改装した
豆腐料理専門店がそれだ。地元の湯山からの豊かな山水で仕込んだ自家製の「結豆腐」を

看板メニューに、「湯葉のパリパリサラダ」「厚揚げ入りの親子丼」など、バラエティーに富んだ豆腐料理が並ぶ。
コースの最後に出てくるご飯には参った。焼いた長ネギを入れ陶器釜で炊き込んだもの、

これまで口にしたことの無い美味であった。

伺ったのは昼時、特別に参千円コースの料理を用意してくれた。今のところ夜のみの営業だから、まさに特別・貸切りである。
設計図を見たときに、古民家移築のため、店としての動線が大丈夫かなと思ったが、「市の坐」という庄屋に招かれ、
そこで振る舞いを受けるといった場面には、効率的な動線の確保は逆に興ざめてしまうので、これで良し。

混んでくればいたるところで飲み会と言うノリも実現できるように囲炉裏の間、板の間には敷物、箱膳も用意されている。
器も、各処においてある骨董品も、相当に吟味されている。聞くところによると市の坐プロジェクトには由布院御三家の
ひとつ山荘無量塔の藤林さん、由布院NO.1の骨董店「五体投地」が強力な助っ人として入っているとのこと。

そう言えば、藤林さんは25年程前、日田市から由布院にやってきて喫茶、食事処、そして今では、亀の井別荘、
玉の湯と肩を並べる旅館「山荘無量塔(むらた)」を創った人だ。

井尾君も喫茶、食事処とその途を歩んでいる。成長が大いに楽しみではあるが、まずはこの「市の坐」が地域の結いの店、
そして遠来の方々が豊かで至福のときを過ごす店として育つことを望んでやまない。お楽しみはまだまだこれからだ。
皆様、由布院お出かけの際は、B&Bの宿+「市の坐」の夕食をお薦めします。(つづく)




Posted by Qさん 大魔人 at 06:59

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由布院の旅(その1)